【まとめ】DNAの構造をイラストでわかりやすく解説【高校生物】
DNAの複製や遺伝子の転写・翻訳を理解するためには、まずDNAの構造について知っていなければなりません。ここでは、DNAやヌクレオチドの構造の特徴について、イラストを用いてわかりやすく解説しています。
目次
そもそもDNAとは?
全ての生物は細胞内にDNAと呼ばれる物質を持っています。DNAを持たない生物は存在しません。
DNAには「タンパク質の作り方」が記載されています。生物は自分でタンパク質を合成して生きているので、DNAが無ければ死んでしまいます。
ところで、DNAは俗に「生命の設計図」とも称されますが、もちろん本当に図面のような紙が体の中にあるわけではありません。
ここでは、DNAの実際の構造について見ていきましょう。
まずは全体を理解しよう
DNAの構造の分野では非常にたくさんの用語が登場するので、混乱する高校生・受験生が多いようです。
遺伝以外の分野でも同じですが、高校生物では、いきなり細かく覚えようとするのではなく、まずは全体を理解することがとても大切です。
まず、DNAの構造がどうなっているのかをまとめてみました。
(※核があるのは真核生物の場合のみ)
どうでしょうか? 全体像を見れば、意外と簡単ではないでしょうか?
細かい用語を覚える前に、まずはこの階層構造を理解しましょう。
ヌクレオチドとは?
全体を理解した上で、細かい説明に入りましょう。
こちらでもすでに解説していますが、ヌクレオチドとは、「リン酸・糖・塩基」から構成される物質の名称です。
先ほどは簡略化したイラストを示しましたが、実際にはこんな構造をしています。
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こんなの覚えられません!
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大丈夫です。構造式を暗記する必要はありません。
ただし、ヌクレオチドが「リン酸・糖・塩基」で構成されていることはゼッタイに覚えてください。
ヌクレオチドの中でも、特に糖が「デオキシリボース」であるヌクレオチドが、DNAを構成しています。
そして、DNAを構成するヌクレオチドの塩基には「アデニン・チミン・シトシン・グアニン」の4種類があります。
それぞれ頭文字を取って「A・T・C・G」と略されることが多いです。
実際にはこのような構造をしていますが、先ほどと同様に、構造式を覚える必要はありません。「ふーんこんな感じなんだ」くらいでオッケーです!
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さっきから出てくるUってなに?
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この後の解説でも説明しますが、RNAを構成する塩基にチミン(T)は存在せず、代わりにウラシル(U)が使われています。これは基本中の超基本事項です。
DNAの構造に関する3つのルール
ここまでは1つのヌクレオチドの構造について細かく見てきました。
次は、1つ1つのヌクレオチドがどのように結合してDNAを構成しているのかを見ていきます。
繰り返しますが、「今自分がどこを見ているのか」を見失わないようにしてくださいね。
さて、DNAの構成には、3つの大事なルールがあります。これは非常に大切なので全て覚えてください。
ルール①: ヌクレオチドは5'→3'方向に結合する
まず、この1つ1つのヌクレオチド同士は、どのようにして繋がっているのでしょうか?
それぞれのヌクレオチド同士は、ホスホジエステル結合によって互いに結合しています。
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「ほすほじ」...?
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「ホスホ」「ジ」「エステル結合」です。「ホスホ」はリン酸を、「ジ」は2つという意味です。
ホスホジエステル結合では、リン酸を介した2つのエステル結合によってヌクレオチド同士が固く結ばれています。
さらに、ヌクレオチド同士は好きな位置で好きな方向に伸びていけるわけではありません。
ヌクレオチドは、5末端→3末端方向にしか結合できません。言い換えれば、3末端→5末端に伸びていくことはありません。
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5末端とか3末端ってどういう意味?
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上の図の構造式を見てみましょう。
ヌクレオチドの糖(DNAの場合はデオキシリボースですね)は、5つの炭素原子から構成されています。
塩基と結合する炭素原子を1として、時計回りに番号を振っていきます。すると、ホスホジエステル結合は5と3で起きていることがわかりますね。
このとき、5がある側を5末端、3がある側を3末端と呼んで区別します。「上」とか「下」では逆さまになると区別できませんからね。
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上の図で炭素原子のCが見つけれないんだけど...?
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高校で有機化学を勉強していないと構造式の見方がよくわからないと思います。4方向に伸びる線が交わっている部分に炭素原子があります。
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5'とか3'ってなに?
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いちいち「5末端」「3末端」と書くのはメンドクサイので、' を右上につけて簡単に書くことがあります。ちなみに5'は「ごプライム」、3'は「さんプライム」と読みます。「ダッシュ」ではありません。
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5末端とか3末端の意味はわかったけど、そもそもなんで5末端→3末端方向にしか結合できないの?
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いい質問ですね。これにはDNAの複製などに関係するDNAポリメラーゼの活性が関与しています。
ただしこれは大学レベルの話になるので、ここでは解説を割愛します。
ルール②: DNAの2本鎖は互いに逆向きに結合する
DNAは通常、ヌクレオチド鎖の2本が1セットとなって存在しています。この2本のヌクレオチド鎖についても方向性が決まっています。
それぞれのヌクレオチド鎖は、車道のようにお互いに逆向きに並んで結合しています。
ルール③: 相補的な塩基同士のみが結合できる
②で説明したように、2本のヌクレオチド鎖は逆向きに結合しています。
このとき、塩基同士は誰とでも自由に結合できるわけではありません。
常に「アデニン(A)とチミン(T)」・「グアニン(G)とシトシン(C)」のペアで水素結合しています。
このように、最初から組むペアが決まっていることを「塩基の相補性」と言います。
上の図では、水素結合の本数がAとT、GとCでは変わっていますね。
AとTの間で形成される水素結合の数は2本
GとCの間で形成される水素結合の数は3本
非常によく問われる知識なので押さえておきましょう。
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あれ? さっきのホスホジエステル結合は?
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ここは高校生・受験生が勘違いしやすいポイントの1つです。
ホスホジエステル結合はタテの話、水素結合はヨコの話です。混乱しないようにしてくださいね。
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なんでAとT、GとCのペアしか結合しないの?
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すでに説明した通り、水素結合の数が異なるからです。
塩基の構造式を用いた説明は割愛しますが、化学的な性質が理由で、Aと安定的に水素結合できるのはT、Gと安定的に水素結合できるのはC、と決まっているわけです。
二重らせん構造について
水素結合によって結合した2本のDNA鎖は、実際にははしごのような形ではなく、らせんを描きます。
これを「二重らせん構造」と言います。
これでよく見かけるDNAの形になりました。ここまでお疲れ様でした。