【まとめ】細胞骨格とモータータンパク質をわかりやすく解説【高校生物】
細胞骨格にはアクチンフィラメント、微小管、中間径フィラメントの3種類ありますが、受験生・高校生にとっては違いが分かりづらいです。この解説では細胞骨格とモータータンパク質について、理解するべきポイントをまとめています。
細胞骨格・モータータンパク質とは
細胞骨格とは、細胞内に骨のように張り巡らされた繊維状の構造です。
細胞の内部は細胞質基質という液体で満たされています。また、細胞膜はグニャグニャと自在に動くことができます。
もし細胞の立体的な構造を内側から裏打ちするものがなければ、細胞はスライムのようにグチャグチャな形を取ってしまいます。
細胞骨格にはアクチンフィラメント、微小管、中間径フィラメントの3種類が存在します。
細胞骨格は単に細胞の構造を維持しているだけではなく、さまざまな物質の運搬路でもあります。
これらの細胞骨格の上を動き、細胞のある場所から別の場所へ、荷物(細胞小器官や小胞)を運ぶ配送業者がモータータンパク質です。
「動く」だと曖昧ですね。厳密には「ATPを分解して得られる化学エネルギーを、運動エネルギーに変換するタンパク質」を指します。
モータータンパク質として、ミオシン、ダイニン、キネシンの3つが知られています。
アクチンフィラメントとは
アクチンフィラメントはアクチンと呼ばれる球状のタンパク質が糸状に繋がった細胞骨格です。
アクチンといえば「筋収縮」ですね。
筋収縮はミオシンフィラメントがアクチンフィラメントを引き寄せることで起きます。筋収縮で登場するアクチンフィラメントは、細胞骨格の1つということです。
筋収縮以外には、アメーバ運動、原形質流動、細胞質分裂などに関与します。
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うーん、そんなに一気に覚えられないです...
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大丈夫です。それぞれの現象をよく考えてみてください。
これらは全て、細胞内の液体が流れるように動く現象です。細胞質が流れるのが原形質流動、それによって細胞自体がダイナミックに動くのがアメーバ運動、細胞質が2つにブチっと分かれるのが細胞質分裂です。 要は全部同じような現象なんです。
ちなみに、細胞質というのは核以外の部分のことでしたね。
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フィラメントってどういう意味ですか?
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「フィラメント」とは繊維状の長い構造物のことです。「アクチンフィラメント」というのはアクチンというタンパク質がたくさん鎖状に繋がっているということです。
アクチン = アクチンフィラメントではないので気をつけてくださいね。
ミオシンとは
ミオシンといえば筋収縮です。
しかしそれ以外にも、モータータンパク質としてアクチンフィラメントの上を移動し、細胞内で細胞小器官や小胞などの物質の輸送も行っています。
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筋収縮と物質の輸送があまり結びつかないんですが...
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実は、ミオシンにはいくつか種類があり、主に筋収縮に働くのはミオシン2、物質輸送に働くのはミオシン5なんです。
もちろんテストや大学受験ではここまで細かい知識は問われませんが、「ミオシンにはいくつか種類がある」と知るだけでも、知識が整理されますよ。
微小管とは
微小管はチューブリンというタンパク質から構成されています。チューブリンにはαとβの2種類が存在します。
微小管の大事な働きとして、細胞分裂時に紡錘体を形成します。また、鞭毛や繊毛を形成しているのも微小管です。
べん毛は一本の長いウニョウニョ、繊毛はたくさんの短いウニョウニョでした。
ダイニンとキネシンとは
微小管の上にもモータータンパク質がいます。これがキネシンとダイニンです。
キネシンとダイニンは微小管の上を移動することで、細胞小器官などの物資の輸送を行います。
キネシンとダイニンは移動の方向がそれぞれ真逆です。キネシンはプラス方向に、ダイニンはマイナス方向に微小管の上を移動します。
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プラスとかマイナスってどういう意味?
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DNA鎖において片方を5末端、もう片方を3末端と呼んで区別するのと同じノリです。
微小管には方向性があり、片側は重合速度が速く、もう片側は遅いです。要は、どんどん伸びていく方向をプラスと呼んでいます。
中間径フィラメントとは
先に紹介したアクチンフィラメントと微小管は伸縮性の高い細胞骨格です。
一方で中間径フィラメントは、ほとんど伸び縮みしません。
また、一度合成された後はほとんど分解されず、非常に安定した構造として残り続けます。
つまり、中間径フィラメントの働きは、細胞の強度を高め、構造を維持することです。
ところで、中間径フィラメントを構成するタンパク質の名前も気になりますよね。
実は中間径フィラメントにはいくつか種類があり、どのタンパク質から構成されているかによって細かく分けられます。
例えば、毛髪や皮膚の細胞ではケラチンが多数結合したものは、ケラチンフィラメントという名前で存在しています。
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ケラチンって、皮膚とか毛のケラチン?
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その通りです! これまで「毛髪や皮膚の細胞を構成するタンパク質」として覚えてきたケラチンの本当の(?)正体は、それらの細胞における中間径フィラメントを構成するタンパク質だったんですね。
細胞骨格の直径
細胞骨格に関する入試問題では、3種類の細胞骨格の直径を問う問題が頻出です。
「数字なんて覚えたくないよ!」という気持ちもよく分かります。が、安心してください。多くの問題は選択式なので、3種類の太さの順番さえ覚えておけば大抵OKです。
アクチンフィラメント < 中間径フィラメント < 微小管
まずはこの大小関係を理解した上で、余裕があれば具体的な数値まで覚えましょう。
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順番を覚えるコツはありますか?
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そもそも中間径フィラメントの「中間」というのは直径が中間という意味です。
まず中間径フィラメントが真ん中に来ることを押さえましょう。
あとはこじ付けですが、「微小」を名乗っている微小管は、この3つの中だとむしろ一番デカいです。
とか考えてればあっという間に覚えられますよ。
間違えやすいポイント
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アクチンフィラメントと微小管はどちらも細胞分裂に関与しているってことですよね?
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たしかに両者は細胞分裂に不可欠ですが、関わる過程が異なります。
微小管は紡錘体の形成、つまり核分裂に関与しており、アクチンフィラメントはその後の細胞質分裂に関与している、ということです。
「細胞質分裂ってなんだっけ?」という人はこちらの解説を読んでください。
補足
本解説と同様に、多くの問題集・参考書では「原形質流動を起こすのはアクチンフィラメント」と解説されています。原形質流動は主に植物細胞で起こり、たしかにアクチンフィラメントが関与しています。しかし、一部の特殊な動物細胞における原形質流動では、微小管のキネシンが関与しているそうです。
日本植物整理学会「みんなの広場-原形質流動」より
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=5162&key=&target=